Sigsand Manuscript

ウィリアム・ホープ・ホジスンとその周辺

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"He took a tiny, corked test-tube out of his waistcoat pocket, and emptied its contents (which consisted of a single, grey-white grain, about twice the size of an ordinary pin's head) on to his dessert plate. He crushed it gently to powder with the ivory handle of a knife, then damped it gently, with a single minim of what I supposed to be water, and worked it up into a tiny patch of grey-white paste. He then took out his gold tooth-pick, and thrust it into the flame of a small chemist's spirit lamp, which had been lit since dinner as a pipe-lighter. He held the gold tooth-pick in the flame, until the narrow, gold blade glowed whitehot.

"'Now look!' he said, and touched the end of the tooth-pick against the infinitesmal patch upon the dessert plate. There came a swift little violet flash, and suddenly I found that I was staring at Baumoff through a sort of transparent darkness, which faded swiftly into a black opaqueness. I thought at first this must be the complementary effect of the flash upon the retina. But a minute passed, and we were still in that extraordinary darkness.

"'My Gracious! Man! What is it?' I asked, at last.

****************

 彼はベストの前ポケットからコルクで栓をした試験管を取り出して、その中身(灰白色をした、針の頭二つ分ほどの大きさの粒が一つ)をデザート皿に空けた。彼はそれを象牙製の柄のついたナイフで丁寧に砕いて粉にし、それから、多分水だと思うが、一滴ほどの水分を加えて少し湿らせ、小さな一片の灰白色のペーストにした。それから彼は金の爪楊枝を取り出して、パイプに火を点けるために夕食時から点したままになっている小型のアルコールランプの火の中に翳した。そしてその金の爪楊枝が白熱して柔らかくなるまで、そのまま炎に晒し続けた。

 「ご覧あれ!」と彼は言った。そして爪楊枝の頭をデザート皿の上の小さなペーストに当てた。すると突然、微かに菫色をした閃光が走った。次の瞬間、私は透き通った闇のようなものを通してバウモフを見ていることに気付いた。だがすぐに、彼の姿はさらに深い闇の中に溶けてしまった。私は最初、これは閃光の網膜に対する補完性効果に違いないと思った。しかし時が過ぎても、我々はまだ不可解な闇の中にいた。
 
 「何てことだろう!一体どうしたっていうんだ?」私はついに言った。
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"'Yes?' I said, as he paused, and looked at me, as if expecting me to have arrived at a certain definite deduction through his remarks. 'Go on.'

"'Well,' he said, 'don't you see, the subtle darkening around the person suffering, is greater or less, according to the personality of the suffering human. Don't you?'

"'Oh!' I said, with a little gasp of astounded comprehension, 'I see what you mean. You ― you mean that if the agony of a person of ordinary personality can produce a faint disturbance of the Æther, with a consequent faint darkening, then the Agony of Christ, possessed of the Enormous Personality of the Christ, would produce a terrific disturbance of the Æther, and therefore, it might chance, of the Vibration of Light, and that this is the true explanation of the Darkness of the Cross; and that the fact of such an extraordinary and apparently unnatural and improbable Darkness having been recorded is not a thing to weaken the Marvel of Christ. But one more unutterably wonderful, infallible proof of His God-like power? Is that it? Is it? Tell me?'

"Baumoff just rocked on his chair with delight, beating one fist into the palm of his other hand, and nodding all the time to my summary. How he loved to be understood; as the Searcher always craves to be understood.

"'And now,' he said, 'I'm going to show you something.'

****************

 「どうかしたのか?」私は言った。というのは、彼が口をつぐんで、私を見詰めていたからだ。まるで私が彼の述べた言葉から的確な推論を導き出すことができるということを期待するかのようだった。「続けろよ」
 「うん」と彼は言った。「分からないかな、つまり苦しみの中にいる人間の周りには微妙な暗闇があるのだが、その闇の深さは、苦痛を受けている人間によって個人差があるんだ。分かるかい?」
 「ああ、そうか!」私は彼の言わんとすることを理解し、息を呑んだ。「君の言いたい事が分かったよ。君は……君はつまり、こう言いたいのだろう。もし苦痛を受けている人間がごく普通の人間であれば、それはほんの僅かな翳りを生み出すだけの微かなゆらぎをエーテルにもたらすだけに過ぎないのだが、それが《計り知れない神性を持ったイエス・キリスト》による《キリストの受難》であったとしたなら、そのことによって生じるエーテルの撹乱は計り知れず、その結果《光の波動》に影響を与えたに違いない。それが《十字架の闇》の真相であると。そして、そのように奇妙で、明らかに不自然な、信じ難い《闇》についての記録は、《キリストの奇跡》を貶めるものではなく、むしろさらなる驚異であり、彼の《神性》の証拠ではないだろうかと。そうだろう?違うかい?言ってくれよ。

バモウフは私の言葉に頷きながら、片方の手の拳をもう一方の手のひらに軽く打ち付けつつ、愉しそうに椅子に揺られていた。理解されたことが嬉しいのだ。探索者が常に理解することに一途であるのと同じように。

「今から」と彼は言った。「君にちょっとしたものを見せたいと思う」

"He talked to me about his theory, telling me that he wanted to show me a small experiment, presently, bearing out his opinions. In his talk, he told me several things that interested me extremely. Having first reminded me of the fundamental fact that light is conveyed to the eye through the means of that indefinable medium, named the Æther. He went a step further, and pointed out to me that, from an aspect which more approached the primary, Light was a vibration of the Æther, of a certain definite number of waves per second, which possessed the power of producing upon our retina the sensation which we term Light.

"To this, I nodded; being, as of course is everyone, acquainted with so well-known a statement. From this, he took a quick, mental stride, and told me that an ineffably vague, but measurable, darkening of the atmosphere (greater or smaller according to the personality-force of the individual) was always evoked in the immediate vicinity of the human, during any period of great emotional stress.

"Step by step, Baumoff showed me how his research had led him to the conclusion that this queer darkening (a million times too subtle to be apparent to the eye) could be produced only through something which had power to disturb or temporally interrupt or break up the Vibration of Light. In other words, there was, at any time of unusual emotional activity, some disturbance of the Æther in the immediate vicinity of the person suffering, which had some effect upon the Vibration of Light, interrupting it, and producing the aforementioned infinitely vague darkening.

****************


 「彼は私に自説を語り、それから私に、その裏付けとなるちょっとした実験を見せたいと言った。彼は会話の中で、大いに興味深いことを多く語ってくれた。光が《エーテル》と名付けられた媒質を介して瞳に運ばれるという基本的な知識は私にもあったが、彼はそこからさらに一歩踏み出して、その特性からさらに根本的な方向へと推し進め、光とは《エーテル》の毎秒毎に一定の振動を持つ波動であり、それが網膜に作用して、我々が《光》と呼ぶ知覚を生み出すのだと指摘した。

 「その指摘に、私は頷いた。なるほど、誰にとっても容易に理解できる説明である。彼はそこから一足飛びに核心に入り、説明するのは難しいが、推測できることだとして、大気の暗転は(その大小は個人の力量に依存するが)常に大きな感情的なストレスを受けている人間のすぐ近くで起きると語った。
 
 順を追ってバウモフは私に示した。研究の結果、彼はこの奇妙な暗転(大抵は余りにも微かで、目で捉えることは難しいのだが)は、光源への妨害か一時的な遮断か、さもなくば《光の波動》の破壊かのいずれかによってのみ起こり得るという結論に至った。それは言い換えれば、激しい感情の振幅によって、苦しみの中にいる人のすぐ近くにあるエーテルはいくらか乱されるから、それが《光の波動》に影響を与えることによって光が妨げられて、前述したような荒漠とした暗転を生み出すということである。

皆様お久しぶりです、ずいぶん間が空いてしまいましたがホジスン体育学校についての続きです。

 当時ホジスンは二十二歳、身長163cmと決して大柄ではなかったが(恐らく当時の英国人と比べても平均以下だったろう)、後に語ったところでは体重67.6kg、吸気時胸囲108cm、上腕囲38cm、前腕囲32cm、腰囲72cm、右大腿囲57cm,下腿囲37cm、顎囲41cmという体格で、モスコウィッツがいうような国で一二を争うという程ではないにしても、十分にがっちりと鍛え上げられた体をしていた。
ある書簡では次のように語っている。「片手で五十六ポンドのウエイト二つを頭上一杯まで持ち上げられましたし、実際、これにさらにウエイトを上乗せしても大丈夫でした。・・・また、四分の一トンの物を手に何のストラップも巻かずに素手で地面から持ち上げられました。(1906年3月2日コールソン・カーナハン宛書簡)」ホープはボディビルディングのほかにも、水泳やボクシング、柔道、乗馬も達者であったという。
体育学校開設の前後の一九〇〇年の十月二十四日、ホジスンはブラックバーン・テクニカル・スクールにおいてE..S.ベリンガム氏の助手としてさまざまなポーズのモデルをしたりデモンストレーションをしている。ホジスンもベリンガム氏とともに講演を行い、自分の鍛錬法についてスライドショーを行った。同様のデモンストレーションは数回行われ、それなりの好評を得たようだ。体育学校はしばらく経つと生徒不足に悩まされるようになったらしい。前回載せた広告が二年二月、そしてブラックバーンの街の急な坂道を自転車で下ったのが二年八月、フーディニに挑戦したのが同年十月のことである。そしてホジスンが書いたボディビルディングに関する記事は、一年八月から四年六月にかけて都合五編を数える。こうして見ていくと、数々の奇行や記事も学校の宣伝のためであったのではないかと思われてくるが、いかがなものだろうか。当時の住所録によると、体育学校には、少なくとも一九〇三年まではホジスンの名が代表として挙がっているが、〇五年には別の人物、R.ワディントン氏に代わっている。こうして学校は一九一五年くらいまで存続したようである。なぜ、ホジスンは代表から外れたのだろう。学校の経営不振によるものか、それとも創作活動に専念したかったからなのだろうか。少なくともはっきりしているのは、一九〇四年に作家としてデビューしたということである。

kane
 先日アップしたホーンテッド・《パンペロ》を、Jules Verne PageのsynaさんがかっこいいPDFにしてくださいました。気になるところの指摘もいくつかして頂きました。どうもありがとうございました。
 自由に使っていいということでしたので、お言葉に甘えて公開させていただくことにします。
 興味のある方は、ここからご覧ください。
 中綴じ版の方は、印刷して綴じると冊子になるようにできています。

 ところで、synaさんは、日本ジュール・ヴェルヌ研究会の創設メンバーの一人です。同研究会は、私市保彦氏を顧問に迎えた、日本で初めての本格的なヴェルヌ研究会で、現在会員を募集しています(僕も会員になっています)。興味のある方は、ぜひ。

(shigeyuki)

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