上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.-- --:-- | スポンサー広告 |
トラックバック(-) | コメント(-) |
▲水線以下 の怪音響
十月 の下旬或夜 のことであつた。余が船艙 に降りて、糧食 を検査しようとすると、右舷 の方に當 つて、不思議にもタツプータツプータツプと云ふ音が聞こえた。而 もそれが慥 かに水線 以下である。
余は何だらうと思ひながら、暫く突立つた儘 耳 を傾けていた。けれども余にはそれが何だといふことは判断が付かなかつた。其内 に怪しい音は止んだが、又始まるだらうと思つて依然として舷側 に氣 を配つて居た。
スルト案の定 又タツプータツプと音が聞こえ始めた。が、今度はそれが左舷 の方でするのである。余は慄然 としてしまつた。何しろ絶海に四年の歳月を送つて、再び他の人類 と相見ることのできない憂鬱的 な生を送つて居る處 へ、不意に這麼 音を聞かされては、余の精髄 が總 ての不 な刺戟 を受くためは無理からぬことである。併 しながら余は何時 までも驚き且 つ戦 いては居られない。そこで勇氣 を振り起し、音のする方へツカゝゝと歩み寄つた。そして靜乎 と耳を傾けた。
明らかに騒々 しい物音が聞える。何か堅いもので船側 を叩くやうな、といつても解るまいが、鐡槌 で舷側 の鐡板 でも叩くやうな音である。スルト今度は不意に水雷 でも爆發 したやうな音がした。余は此 けたゝましい音響 に脅かされ、吃驚 して後へ引き退つたのである。
余は此 不思議な音を三度ばかり聞いた。併 し三度きりであとは一しきり元の靜寂に歸 つた。
『今の音は何で厶 いませうか。』と妻が余に訊いた。
『叱 つ!靜に!』と余は妻の言葉を遮つた。
彼女 は餘程 恐怖に打たれたと見え、色蒼 ざめて余の傍に降りて來た。そして聲 を潜めて斯 ういつた。
『何 でせうねえ。今の音は?』
余が此 問ひに答へやうとする途端、又恐しい音響 が舷側 の外に起つた。妻は女 だけにキヤツと叫んで二三歩引退つたが遠雷 のやうに響 きの名殘 りが靜まると、彼女 は聲 をはづませて三度 斯 う訊いた。
『何 でせうねえ?何 でせうねえ?何 でせうねえ?』
十
余は何だらうと思ひながら、暫く突立つた
スルト案の
明らかに
余は
『今の音は何で
『
『
余が
『
"From the Tideless Sea"
Written by William Hope Hodgson
(ウィリアム・ホープ・ホジスン)
Transrated by 阿武天風
スポンサーサイト
トラックバックURL↓
http://nightland.blog86.fc2.com/tb.php/131-eae3013b