Sigsand Manuscript

ウィリアム・ホープ・ホジスンとその周辺

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   ▲闇中あんちう何者かうごめく

 余はくの如くにして音響おんきやうの源が何處いづこにあるかといふことをきはめるめに種々しゆゞゝな苦心をした。其結果そのけつくわ舷側ふなべり欄干レールが、其の怪音くわいおんを間接に傳導でんだうするのだといふことを知つた。そこで余は欄干レールに耳を押し付けて、およ音響おんきやうの所在をたしかめたのち此所ここぞと思ふところへ例の牛眼燈ぎうがんとうを照らして見た。余は其處そこで何者か動くものを發見はつけんしたが、その正體しやうたい見現みあらはすまへに、早くも怪物くわいぶつは姿を海草かいさうかげに没してしまつた。
 何時いつの間にか妻が短銃ピストルげて、余の後に立つて居た。彼女かれ上甲板うへける余の擧動きどうを、初めから凝乎じつと見守つて居たのである。
 『萬一もしもの事があるといけませんから下甲板したへ降りて下さいな。』と妻はしきりに余を説きすすめた。
 しかし余はその勸告くわんこくに従ふことをしなかつた。そして暫く後部最上甲板ブーブに立つて、怪物くわいぶつ現はれるのを待つた。
 刻一刻こくいつこくと更けた。灰色はひいろに曇つた空からも、何か變化へんくわが現はれさうながして、待ちぐんで下甲板したに降りるまでの二時間ばかりといふものは、余の全身は妖魔えんまてのひらの下に壓伏おしつけられて居るやうな心持こころもちがした。

"From the Tideless Sea"
Written by William Hope Hodgson
(ウィリアム・ホープ・ホジスン)
Transrated by 阿武天風

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