Sigsand Manuscript

ウィリアム・ホープ・ホジスンとその周辺

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   ▲野豚が惨殺された

 寢室しんしつはひつたがよひ怪異くわいゝ出來事できごと熟睡じゆくすゐを妨げたのか、午前二時頃不圖ふと眼を醒すと、何時いつとはなしに意識が明晰はつきりしてて、うしても元の睡眠すゐみんに陥ることができなかつた。そこで竊乎そつとランプをけて寢室しんしつを抜け出した。
 上甲板うへへ出ると靜寂せいじやくなる深夜の空氣くうきが、又してもかすかな怪音くわいおんゆるいでる。余は其音そのおとたより、、、に船首の方へ近寄つた。と思ふと、突如として騒々さうゞゝしい音が起つた。余はランプで四邊あたりを照らした。けれども、もとより何者も見出すことはできなかつた。
 絶海無人ぜつかいむじんほとり、暗夜あんやにけたゝましき怪音くわいおんを聞くといふことに就いては、其處そこに何等かの危險きけんが存在するものと覺悟かくごしなければならない。余は夢破れてふたゝび眠られぬまゝの、いはゞ、、、)一しゆ醉狂すいきよう上甲板うへへ出てたのであるが、不圖ふと昇降口ハツチの扉を開け放しにしておいは事に考へ及ぶと、直ぐに暗中あんちう危險きけんが何事も知らずに熟睡じゆくすゐして居る妻と娘のうへに及びはしないかといふことが心配になつたので、一旦退いて昇降口ハツチの扉を閉ぢ、背水はいすゐぢんを張つた積りで、片手にランプを打振りうちふり片手にをのを提げて空虚な前甲板ぜんかんぱんに行つた。
 余は正直しやうじき白状はくじやうする。此時このときばかりは實際じつさい恐怖の念に打たれざるを得なかつた。
 余は此處ここで凄惨なる光景ありさまに眼をさらした。余の船には巨大な一頭の野豚がのこつて居た。その野豚は前甲板フオクソルの下の豚舎スチイ飼養しやうしてあつた。ところが余がそのこの豚舎スチイに近づいて見ると、豚の奴は堅牢けんらうに造られた豚舎スチイから引きずりいだされ、膨れた腹をうへにして死んで居るではないか。のみならず、豚舎スチイの太い鐡格子てつがうしが、飴細工あめざいくのやうに自由じいうに曲げてある。甲板デツキには鮮血がほとばしつて見るから殘酷むごたらしい。

"From the Tideless Sea"
Written by William Hope Hodgson
(ウィリアム・ホープ・ホジスン)
Transrated by 阿武天風






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