Sigsand Manuscript

ウィリアム・ホープ・ホジスンとその周辺

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   ▲人肉のふたのか

 余は此蟹このかにの大群が今迄いまゝで何處どこに隠れて居たか、又如何にして人肉をくらはんと欲するに至つた、そんな事は知ることはできない。が、彼等は或は一種の好奇心かうきしんつて、余のこの絶望ぜつばうに囚はれた船を襲ふて見たのかも知れない。
 余は又うも考へる。繁り重なつた海草かいさううへに現はれた黒色こくしよく船體せんたいを、彼等は何者かの死骸しがと見て、それをはさみくらはんがめに、大擧たいきよして船體せんたい包圍はうゐしたのではあるまいか。しさうだとすれば、船側ふなべ鐡板てつぱんは彼らに取つて、恐しく靱強タツフかはと見えたに相違さうゐない。それは兎に角彼等が船を襲ふた理由りいうたしかに解らないが、彼等の鋭敏な嗅覚に依つて、吾々われゝゝ親子三人の存在を嗅ぎ付けて、ノソゝゝやつてたのだとすれば今後共この危險きけん屡ゝしばゝゝ起るものと覺悟かくごしなければならぬ。余は野豚の一頭位はけつして惜しまぬ。絶望といふ運命が吾々われゝゝまへに立つて、吾々われゝゝ生活せいくわつの線を切斷たちきらうとして居る矢先であつても、貴重きちよう糧食りやうしよくとしての野豚はけつして惜しむに足らぬ。が、吾々われゝゝ三人がこの醜い敵に依つて、くらつくさるゝといふ事は到底たうてい忍びべきでない。

"From the Tideless Sea"
Written by William Hope Hodgson
(ウィリアム・ホープ・ホジスン)
Transrated by 阿武天風





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