Sigsand Manuscript

ウィリアム・ホープ・ホジスンとその周辺

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.-- --:-- | スポンサー広告 | トラックバック(-) | コメント(-) |
<原文>


It was the same figure that I had just been attributing to my fancy. I will admit that I felt more than startled; I was quite a bit frightened. I was convinced now that it was no mere imaginary thing. It was a human figure. And yet, with the flicker of the moonlight and the shadows chasing over it, I was unable to say more than that. Then, as I stood there, irresolute and funky, I got the thought that someone was acting the goat; though for what reason or purpose, I never stopped to consider. I was glad of any suggestion that my common sense assured me was not impossible; and, for the moment, I felt quite relieved. That side to the question had not presented itself to me before. I began to pluck up courage. I accused myself of getting fanciful; otherwise I should have tumbled to it earlier. And then, funnily enough, in spite of all my reasoning, I was still afraid of going aft to discover who that was, standing on the lee side of the maindeck. Yet I felt that if I shirked it, I was only fit to be dumped overboard; and so I went, though not with any great speed, as you can imagine.

I had gone half the distance, and still the figure remained there, motionless and silent--the moonlight and the shadows playing over it with each roll of the ship. I think I tried to be surprised. If it were one of the fellows playing the fool, he must have heard me coming, and why didn't he scoot while he had the chance? And where could he have hidden himself, before? All these things, I asked myself, in a rush, with a queer mixture of doubt and belief; and, you know, in the meantime, I was drawing nearer. I had passed the house, and was not twelve paces distant; when, abruptly, the silent figure made three quick strides to the port rail, and climbed over it into the sea.

I rushed to the side, and stared over; but nothing met my gaze, except the shadow of the ship, sweeping over the moonlit sea.

How long I stared down blankly into the water, it would be impossible to say; certainly for a good minute. I felt blank--just horribly blank. It was such a beastly confirmation of the unnaturalness of the thing I had concluded to be only a sort of brain fancy. I seemed, for that little time, deprived, you know, of the power of coherent thought. I suppose I was dazed--mentally stunned, in a way.

As I have said, a minute or so must have gone, while I had been staring into the dark of the water under the ship's side. Then, I came suddenly to my ordinary self. The Second Mate was singing out: "Lee fore brace."

I went to the braces, like a chap in a dream.


*********************


一、大海から現れたもの (続き)

 それはついさっき、気のせいなんだと決めつけたばかりのものと同じ奴だった。驚いたどころじゃなかった。恐怖したよ。もう夢なんかじゃないってはっきりとわかった。そいつはまさに、人の形をしてたんだ。だが、月の光が煌き、影が浮き彫りになっているにも関わらず、それ以上のことはわからない。どうするべきかと、怯えながら突っ立っていたんだが、だんだん誰かの悪ふざけなんじゃないかなんて思えてきた。どんな理由や目的があるんだか、そんなこと知ったこっちゃないが、俺はそんな風に考え始めたんだ。常識的にありえないという確証は、有難かった。それで、とりあえず、すっかり気が楽になってた。そんなこと前には思い付きもしなかった。俺は勇気を奮い起こした。想像ばかり膨らませてゆく自分を責めた。そうでなきゃもっと前に気が付いているべきだったんだ。でもな、馬鹿みたいに聞こえるだろうが、そんなふうに理屈付けてみても、まだメイン・デッキの風上側に立っているのが誰なのか確かめに行くのが恐かったんだ。とはいっても、それを避けて通ろうってんだったら、俺にはただ海に蹴落とされるのがお似合いだなんて思ってね。だから俺は進んでいった。御想像の通り、とてもゆっくりとだがね。
 半分くらいは距離を詰めていたが、あいつはまだそこにいた。ぴくりともせず、押し黙ったまま・・・その真上を影と月の光が船の揺れに合わせて踊っていた。あいつを脅かしてやろうとしたんだと思う。もし、あれが誰かの悪ふざけなら、俺が来るのがわかったはずだろ、じゃ、なぜ逃げられる内に逃げなかったんだ、さっきまで、どこに逃げてたって言うんだ。こんなことを慌しく考えた。信じる気持ちと、疑う気持ちとが、ごちゃ混ぜになったような気分だったよ。そう、そうする間にも、俺はあいつとの距離を詰めていった。甲板室を通りすぎて、奴とは十歩も離れてなかった。突然、その影は三歩で左舷の手摺りを飛び越えて海の中に消えちまった。
 俺も駆け寄って海を覗き込んだ。だけども、月に照らされた海に浮かぶ船の影の他は何も目に入ってきやしなかった。
 いったいどれくらいぼんやりと海を見おろしていたのかわからないが、多分かなりの時間だったんだろう。何かあっけにとられてしまって、ひどく虚脱感を感じた。ただの錯覚と決め付けていたことが、<超自然的な>ことだったという、忌々しい確証を得てしまったからだ。そのわずかな時間、筋を通してものを考える力が奪われていたみたいだった。俺はぼうっとしてたと思う。心底、愕然としていたんだ。
 さっきもいったように、舷側の暗闇を見下ろしながら、何分も過ぎていたに違いない。ふと、現実に引き戻された。 「リー・フォア・ブレース!」二等航海士の声が聞こえたんだ。
 俺はブレースに向かった。夢うつつの水夫みたいにね。

************************

 ここまでが、第一章です。
 kaneさんから頂いた翻訳に、僕が少しだけ手を加えて載せてみましたが、改悪になっていなければと思います。
 本当は、訳注などもつけるべきなんでしょうね。
 反響を見ながら、以降は、不定期に掲載してゆくつもりです。
スポンサーサイト

最初の段落に誤植を見つけました。
> 俺はそんな風に考える始めたんだ。

それから、
> ある意味、茫然としていたんだ。
のところですが、stunnedの前のmentallyという語は明示的に訳出したほうがいいのではないでしょうか。心の底からぞっとする感じが「精神的に」というところに表れているような気がするので。

最近どうもこんなことばかりしているんですよね。会誌に載る翻訳の件で。

研究会のページまでリンクを貼っていただいて、どうもありがとうございます。

2007.02.03 02:33 URL | syna #NPhlPyRE [ 編集 ]

指摘、どうもありがとうございます。
早速、直しました。
重箱の隅、とても有難いです。

ヴェルヌ研究会、軌道にのっているようですね。
会報が楽しみです。

2007.02.03 22:38 URL | shigeyuki #- [ 編集 ]

そうそう、ホジスンとは関係なく、ヴェルヌの話ですが、この前雑誌「pen」を見ていたら、orosz istvanというグラフィックアーティストの作品に、ヴェルヌの「神秘の島」のカバーがありました。なかなか面白いトリックアートでした。ネットで捜したら、↓が見つかりました。
http://www.grand-illusions.com/opticalillusions/island/
他にも、
http://members.lycos.nl/amazingart/E/artist14.html
とか、ありました。
ご存知だろうとは思いましたが、面白かったので、紹介します。

2007.02.03 23:02 URL | shigeyuki #- [ 編集 ]

トリックアートですか、いやいや、初めて見ましたよ。
よかったらぜひ掲示板のほうでも紹介してください。

2007.02.04 02:20 URL | syna #NPhlPyRE [ 編集 ]













管理者にだけ表示

トラックバックURL↓
http://nightland.blog86.fc2.com/tb.php/18-bb0576c9

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。