Sigsand Manuscript

ウィリアム・ホープ・ホジスンとその周辺

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 埋もれていた作家ホジスンの再評価に大きく貢献したのが、Cthulhu神話で有名なH.P.ラヴクラフトです。もともとはラヴクラフトのファンだったオーガスト・ダーレスによって、主にラヴクラフトの本を出版するという目的のために設立された小さな出版社、「アーカムハウス」。ここから1946年に出版されたのが、『The House on the Borderland and other novels』。書影が、その本です。この本が、ホジスン再評価の先鞭となりました。
 収録作品は、『The Boats of the "Glen Carrig" 』、
『The House on the Borderland』、『The Ghost Pirates』、の、いわゆる「ボーダーランド三部作」に、問題作『The Night Land』を加えたもの。つまり、ホジスンの全長編を収録したものでした。
 ちなみに、現在の古書価は、300ドルほどのようです
 
 ホジスンの作品に、ラヴクラフトが言及しているエッセイがあります。

「定本ラヴクラフト全集」7-Ⅰ 国書刊行会刊

に収録されている「文学と超自然的恐怖」というエッセイがそれです。
そのエッセイのなかから、ホジスンについて述べている部分を抜粋して、載せてみたいと思います。
テキストは、上記の本の中から。翻訳は、植松靖夫さんです。

**************

 出来、不出来の波がややある文体の持ち主ではあるが、日常生活の表面下に潜む世界を力強く暗示的に表現しているのが、ウィリアム・ホープ・ホジスンで、この作家は今日、不当にもあまり知られていない。ごくありふれた感傷的な捉え方で、宇宙、宇宙と人間の関係、人間同士の関係を見てしまう嫌いがあるけれども、非現実的世界を真面目に扱った点では、ホジスン氏はひょっとするとアルジャナン・ブラックウッドに次ぐ作家かもしれない。さりげなくほのめかしながら、あるいは些細なことを詳しく描写しながら、名状しがたい醜怪な侵略者が身近に迫っていることを暗示したり、土地なり建物なりの描写を通して異様なただごとならぬムードを醸し出す技巧では、とてもホジスン氏をしのぐ者などいないだろう。
 『グレン・キャリグ号のボート』(一九〇七)は、沈没した船の生存者が様々な、敵意に満ちた事件や恐ろしい未知の島と遭遇する物語である。小説の初めの部分にみなぎっている脅威には誰もが圧倒されてしまうであろうが、ただし、終わりの方になると、ありきたりの冒険譚に堕してしまっている。十八世紀の文章を再現しようというつもりなのだろうが、その不正確な浪曼派まがいの試みのおかげで全体の効果が台無しになっている。とは言え、本当に海の事に関しては精通している作者の博学ぶりが随所にうかがわれていて、それが救いになっている。
 『異次元を覗く家』(ホジスン氏の最高傑作かもしれない)は、アイルランドの孤立した奇怪な屋敷にまつわる話で、別世界の様々な驚異的な力がその屋敷へ集中し、地の底より現われた忌わしい怪物の棲み家と化する。語り手の精神が、果てしない宇宙の彼方と、無限の時の中を彷徨し、太陽系の終末を目撃するという話は、この作品に文学としての独自の地位を与えている。さらに、自然の風景を描きながら、そこに得体のしれぬ恐怖が待ち伏せしていることをそれとなく示す作者の手腕はさすがである。平凡な感傷に少し染まったところさえなければ、第一級の作品である。
 『幽霊海賊船』(一九〇九)は右記二作と合わせた三部作の締めくくりを成す作品で、最後の航海に出た不運な幽霊船に取り愚き、ついには船を計り知れない運命の中へとひきずり込む恐ろしい海の魔物(人間に似たようなところもあるので、ひょっとすると昔の海賊の霊かもしれない)を説得力あふれる筆致で描いている。船乗りならではの知識を自由にあやつり、自然界に潜む戦傑を間接的にうかがわせる事件を巧みに選び出して描いたこの小説は、うらやましいくらい場面に盛り上がりを見せることが時々ある。

(shigeyuki)

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オーガスト・ダーレスについて
オーガスト・ダーレスオーガスト・ダーレス(August William Derleth、1909年2月24日 - 1971年7月4日)は、アメリカ合衆国ウィスコンシン州ソーク・シティ生まれの小説家、SF作家、推理作家、ホラー作家、編集者。ウィスコンシン大学英米文学科卒。1926年、『ウィアード・テ

2007.02.20 10:06 | ミステリー館へようこそ

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