Sigsand Manuscript

ウィリアム・ホープ・ホジスンとその周辺

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 学生の下訳程度の翻訳で、いろいろと見直すべきところがありますが、とりあえずは一通り訳しきりました。ご意見、叱責等、よろしくお願いします。
 それでは、ちょっとした解説のようなものを、kaneさんに頂いた資料なども参考にしながら、書くことにします。

 "Eloi Eloi Lama Sabachthani"という小説が最初に世に出たのは1919年のことです。ホジスンが死んだのが前年の1918年ですから、死後発表ということになります。その時のタイトルは"The Baumoff Explosive"というもので、発表されたのは
Nash's Illustrated Weekly 2(2) Sep.20,1919
 です。
 後に、"Eloi Eloi Lama Sabachthani"のタイトルで1973年に
Weired Tales 47(2) Fall, 1973
 に再録されました。この時タイトルが変更されたのは、"Eloi Eloi Lama Sabachthani"の方が本来のタイトルであったとされたためだということです。
 また、この作品が収録されている単行本には、1975年にGrantから出版された"Out of the Storm"があります。

 この作品を一読して、どういう感想を持ったでしょうか。
 短編としての完成度の高さとか、説得力とか、そういった面では逸品とは言えないかもしれませんが、僕はとても興味深い作品だと思います。結果としてオカルト科学を土台にしているわけですが、当時はまだエーテルの存在がアインシュタインらによって完全否定されて間がなかったわけで、いわば学問としての科学の門外漢であるホジスンがまだエーテルの存在を完全に信じていたと考えるなら、彼の科学的なものに対する趣向や論理的な考え方を重視する思考性を読み取れるあたり、SF小説の先駆のひとつと考えていいのではないでしょうか。さらに、忘れてならないのが、この作品とホジスン畢生の長編「ナイトランド」との親和性です。「ナイトランド」の第二章<最後の角面堡>から引用します。

……古い科学(といっても、わたしたちから見れば未来科学だが)に関する記録はお寒いかぎりであるが、それによると、計り知れぬ外宇宙の力をその古い科学が乱してしまい、この正常な現在ではみごとにわれわれを保護してくれている<生命防護層>を、怪物や獣人の一部に突破させる事態を、ひき起こしたのだそうだ。こうして邪霊たちの物質凝固現象が起きたり、また別の場合にはグロテスクで恐ろしいばけものが生み出され、それらが今この世界の人類を取り囲んでいる。外宇宙の力が実際に物体としての形をむすべないような地域でも、精神のいとなみに影響を及ぼす危険な力に侵入をゆるす結果を招いた。

(荒俣宏訳)


 ここで語られている"古い科学"と"Baumoff Explosive"は、その性質から見ても、同じものを指しているように思えます。「ナイトランド」が、文字通り闇に覆われた世界であり、その中を獣人が闊歩しているあたりも、通じるものがありそうです。そういう視点からこの作品を見ると、また色々と面白いのではないでしょうか。
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